EMOSIWNでは、有線七宝 (クロワゾネ)と、象嵌七宝 (シャンルヴェ)と呼ばれる二つの伝統技法を中心に制作をしています。その他、太陽の光を利用するソーラープレートエッチングというテクニックも独自に創作に取入れています。このページでは、有線七宝と象嵌七宝の基本的な制作過程をご紹介致します。

オリジナルの釉薬を制作する場合、ベースとなる釉薬へ顔料を混ぜ、窯で焼成した後、乳鉢でグラニュー糖のような細かさまで砕きます。ふるいにかけ、釉薬のサイズを均等にしたのち、丁寧に水洗いをしながら更に細かい粉末を注意深く取り除きます。これは粉末が曇った色味の原因となりうる為。その後釉薬へ布海苔 ( 海藻を乾燥させ、水を加え煮詰めた糊 ) を混ぜて準備の完成です。

七宝という工芸は、金属にガラス質の釉薬を焼付けることが基本。ベースとなる金属は様々ですが、ここでは銅版を利用したものをご紹介致します。先ずデザインにそって糸鋸で銅板を切り、ヤスリで整えたのち、バーナーで焼きなましてから、木槌や金槌で軽く丸みを付け、その後銅板の表と裏に下地の釉薬をのせ焼成し、銅板素地の準備段階を完成します。

赤カーボン紙や水性ペンを使った下書きを銅板へ写した後、植線という工程に入ります。有線七宝は銀線と呼ばれる幅1mm、厚み0.1mm程のリボンをカットし、もようばしと言う専用のピンセットを使って曲げながら、下絵に沿って線を立てていきます。その際、白笈(はっきゅう)という紫蘭の球根を粉末にし、水を加えた糊を接着材にします。

銀線を立て終わった後、表面に希釈した布海苔をスプレーし、透明の釉薬を振掛け、乾燥後一度焼成して、銀線をしっかり銅板のベースに固定させ、いよいよ色差しの工程に移ります。銀線で区切られた模様毎に釉薬を足しながら焼成していく過程は長く時間のかかる作業。施釉、乾燥、焼成、ゆっくりと熱を除いたのち、酸洗いで被膜除去を繰返します。５回程色差しをリピートし、焼成毎に溶けていく釉薬の高さが銀線と同じになれば、そこからは研磨工程。

研磨には、粗さの異なる砥石で段々と目を細かくしながら丁寧に磨いていきます。名倉砥石まで終了した後、最後は炭を使って研ぎあげ、蜜蝋で研磨の仕上げをして完成。

★ EMOSIWN クロワゾネ特集記事 を是非ご覧下さい。Sorbus Minima by Irina & Silviu

象嵌七宝 (シャンルヴェ) には幾つかの異なるスタイルが存在しますが、私の場合は、先ず金属板にデザインをトレースし、それから糸ノコでくり抜き、その板を新しい別の金属板へ溶接し貼り合わせます (後に、くり抜いた凹部分へ釉薬がのせられます。二枚目の板が釉薬を支える働きをします）。 溶接後は、酸化皮膜を取り除き、金属のアウトラインを整形して、ペンダントやリングの原型を完成。この原型を基にゴム製の型が作られ、ロストワックスと呼ばれる鋳造法によりシルバーやゴールド等のメタルで原型が複製されます。この原型により、同じデザインのアイテムを様々な色のパターンで提供する事が可能になります。

ベースとなる金属が鋳造さた後、布海苔と呼ばれる天然接着剤をミックスして湿らせた七宝釉薬を凹部分へ差していきます (釉薬の準備は有線七宝と同様)。釉薬を完全に乾燥させてから760度程の窯で焼成します。焼成後の酸化皮膜を取り除くことと、七宝の色目を鮮やかにする為に、酸洗を行いながら、溶けた釉薬の表面が凹部分の金属の表面と同じ高さになるまで、焼成を繰り返します。

焼成作業の後は、研ぎの段階へと進みます。荒い砥石から始め、徐々に細かいもので磨きながら完成させていきます。名倉や炭、蜜蝋を使って仕上げる場合もあれば、焼成の際の釉薬の艶をそのまま生かすスタイル等、デザインにより工程が異なります。

★ EMOSIWN スタジオ記事 を是非ご覧下さい。Sorbus Minima by Irina & Silviu

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